海外で婚姻手続きを行うために必要な「アポスティーユ・領事認証」徹底解説
海外で婚姻手続きを行う場合、日本で取得した書類(戸籍・独身証明・出生証明など)をそのまま提出しても、**外国の役所は「本物かどうか判断できない」ため受け付けてくれません。
そのため、書類に国際的に通用する証明(Legalization)**を付ける必要があります。
その証明手続きが
- アポスティーユ(Apostille)
- 領事認証(非ハーグ加盟国向け)
の2種類です。
どちらが必要かは、提出先の国がハーグ条約加盟国かどうかで大きく変わります。
@ ハーグ条約(認証不要条約)とは?
正式名称は
「外国公文書の認証を不要とする条約(Hague Convention Abolishing the Requirement of Legalisation)」。
1961年に採択され、日本は1970年に加盟。
◆条約の目的
「各国で発行された公文書の真正性を簡易に証明し、国際的な手続きをスムーズにする」
というもの。
もしこの条約がなければ、
@日本側外務省での認証
A相手国大使館での認証
といった二重の手間が必要になります。
ハーグ条約加盟国では、この二重手続きの省略を認めており、
国家間で認証の方式が統一されています。
A アポスティーユ(Apostille)とは?
ハーグ条約加盟国向けに、日本の外務省が発行する「国際認証」です。
アポスティーユが付いていれば、相手国大使館の認証は一切不要になります。
◆アポスティーユの役割
日本国内で発行された書類が“正式な公文書”であることを国際的に証明
その証明が世界共通の形式(10項目の定型フォーマット)
加盟国間で相互に有効として扱われる
◆アポスティーユ対象の代表例
- 戸籍謄本(全部事項証明・個人事項証明)
- 独身証明書(本籍地の法務局が発行)
- 住民票
- 出生証明(本籍地の証明により代替)
- 公証役場で作成した宣誓供述書
B ハーグ条約加盟国はどうやって使う?
婚姻手続きで必要な流れは次のとおりです。
●ステップ1:日本で必要書類を取得
例:戸籍謄本、独身証明、住民票等
●ステップ2:外務省でアポスティーユを取得
外務省が書類をチェックし、“この文書は正式なものです”という
アポスティーユ証明(Apostille Certificate)を貼付。
●ステップ3:翻訳(必要な国のみ)
英語でOKな国
完全に日本語NGな国
など、国ごとに異なります。
●ステップ4:婚姻手続き機関へ提出
市役所
裁判所
登録官庁
など国により異なる。
これで完了。大使館での認証は不要です。
C ハーグ非加盟国(中国・ベトナム・インドネシアなど)はもう一手間必要
ハーグ条約に加盟していない国では、アポスティーユが使えないため、
**「二段階認証(ダブル認証)」**が必要になります。
◆非加盟国で必要となる二段階認証
- 日本の外務省が書類を確認して「公印確認」を付ける
- その国の大使館・領事館で、外務省の公印を“本物かどうか”認証する
つまり
外務省(日本) → 相手国大使館
と2つの機関で認証が必要です。
◆例:ベトナムで婚姻手続きする場合
@ 独身証明書を本籍地で取得
A 外務省(東京/大阪)で公印確認
B ベトナム大使館で領事認証
C ベトナム側の翻訳(ベトナム語)
D 婚姻手続きへ提出
アポスティーユに比べ、
- 費用が高い
- 取得に時間がかかる
- 大使館予約が必要な場合も
と、ひと手間どころか二手間以上です。
D アポスティーユと領事認証の違い
| 項目 | アポスティーユ | 領事認証(非加盟国向け) |
|---|---|---|
| 対象国 | ハーグ条約加盟国 | ハーグ非加盟国 |
| 手続き内容 | 外務省のアポスティーユのみ | 外務省の公印確認+相手国大使館の領事認証 |
| 手間 | 少ない | 多い(2段階認証が必要) |
| 費用 | 比較的安い | 大使館手数料がかかるため高くなりがち |
| 取得日数 | 短い(即日〜数日) | 長い(予約や審査が必要) |
| 大使館での追加手続き | 不要 | 必要 |
E 国別:婚姻手続きでよく使う認証タイプ
下記は実務で特に問い合わせの多い国です。
◆アポスティーユで足りる国
- アメリカ
- フィリピン
- 韓国
- オーストラリア
- イギリス
- フランス
- ドイツ
- 台湾
など多くの先進国・英語圏
◆領事認証が必要な国(要ダブル認証)
- 中国(最も多い)
- ベトナム(婚姻手続きは特に複雑)
- インドネシア
- タイ
- カンボジア
- UAE・サウジなど中東
- インド(一部州は独自ルール)
F 必要書類一覧(海外婚姻手続き向け:日本側)
国によって多少異なりますが、基本は以下。
- 戸籍謄本(日本人側)
- 独身証明書(本籍地市区町村)
- パスポート
- 住民票
- 婚姻届受理証明書(国によっては要求される)
- 公証役場での宣誓供述書(必要国のみ)
ここに
- アポスティーユ or 公印確認+領事認証
- 翻訳
を加えて完成です。
G まとめ:海外での婚姻手続きは「提出先の国」がすべて決める
海外婚姻では必ず次の順番で考えます。
- 相手国がハーグ条約加盟国か?
- 必要書類は日本の本籍地で取得できるか?
- 認証はアポスティーユ?領事認証?
- 翻訳はどの言語?どの形式?
- 最終的に提出する役所のルールに合っているか?





